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掛け布団をめくると、肩のあたりだけ冷たい空気が入り込む。厚みを足せば重くなり、軽くすれば朝方に寒くなる。
その行き止まりを抜ける方法を探していくと、たいてい同じ言葉に行き当たります。アイダーダウン。そして値段を見て、そっと画面を閉じることになります。
アイダーダウンの布団が200万円を超えるのは、野生の巣から人の手で集めた分しか採れないからです。和雲は220,000円からです。
和雲が選ばれているのは、羽毛の等級を落とさずに、店舗を持たない売り方で値段を抑えているからです。
ただ、200万円と22万円の差が、そのまま羽毛の差というわけではありません。差の一部は、生地と売り方から生まれています。
アイダーダウンの布団は、普通の羽毛布団と何が違うのか?

アイダーダウンは、アイスランドに生きるアイダーダック(和名ホンケワタガモ)の巣から採る羽毛です。
ここが他の羽毛と根本的に違います。ガチョウやアヒルの羽毛は、食用として育てられた鳥から採ります。アイダーダックは育てられません。
1874年にアイスランド政府が特別保護動物に指定しました。家畜にできないため、流通しているアイダーダウンはすべて野生の鳥のものです。
親鳥は自分の胸の羽毛を抜いて、卵を包むように巣へ敷きます。ヒナが巣立ったあと、地元の農家がその羽毛を手で集める。1つの巣から採れるのは、およそ20gです。
| 項目 | アイダーダウン | マザーグース | ホワイトダック |
|---|---|---|---|
| 鳥の育て方 | 野生のみ・飼育不可 | 飼育した成鳥 | 飼育したアヒル |
| 採り方 | 巣から人の手で採取 | 羽毛の採取工程で回収 | 羽毛の採取工程で回収 |
| 1回に得られる量 | 1つの巣で約20g | 1羽から数十g | 1羽から数十g |
| 布団1枚に必要な量 | シングルの本掛けで約1,000g(3種とも大きくは変わりません) | ||
| 羽毛の性質 | 繊維どうしがからみ合う | ダウンボールが大きい | ダウンボールは小さめ |
| 店頭で見かける頻度 | ほとんど無い | 高価格帯の棚に並ぶ | もっとも多い |
「布団1枚に約1,000g」という数字を、もう一度見てください。1つの巣で20gしか採れないのですから、布団1枚のために50以上の巣をまわることになります。
1年で作れるのは、世界中で2,000枚から3,000枚
採取できるのは、ヒナが巣立ったあとの限られた時期だけです。巣を壊さない採り方にも決まりがあります。
結果として、世界全体の年間採取量は2,000kgから3,000kg程度が限界とされています。シングルの羽毛布団に直すと、年に2,000枚から3,000枚。世界中の需要に対して、それだけしか作れません。
日本で流通する羽毛布団を1万枚並べたとして、アイスランド産の羽毛が入っているものは3枚ほどです。ポーランド産の羽毛でも3%ほどにとどまります。
売り場で見かけないのは、店が扱わないからではない。そもそも世の中に、ほとんど存在していません。
ダウンパワーの数値だけで比べると、見誤ります
羽毛の暖かさを表す指標に、ダウンパワーがあります。ダウンボール1個がどれだけ膨らむかを測った数値で、大きいほど少ない量で空気をためられます。
アイダーダウンは、この指標と相性がよくありません。繊維どうしが細かくからみ合う性質があり、ばらけて膨らむタイプの羽毛とは伸び方が違うからです。
数値表を横に並べて大きいほうを選ぶ、という買い方だと、アイダーダウンは選ばれにくい。指標が測っているものと、この羽毛の長所がずれています。
羽毛の等級のなかでアイダーダウンがどこに置かれるかは、羽毛布団のアイダーとは?でも整理しています。
業界が言わないのはここです。値段を決めているのは羽毛だけではありません
ここまでの話だけなら、200万円にも理由があるように見えます。原料の希少さは、たしかに値段の土台です。
ただ、それだけで200万円にはなりません。羽毛布団の値段は、大きく4つに分かれます。
- 羽毛そのものの仕入れ
- 側生地(羽毛を包む布)
- 洗浄・選別・縫製にかかる手間
- 買い手に届くまでの費用(問屋・売り場の家賃・販売員)
私たちが比べているのは、1つ目だけです。ところが値段を押し上げているのは、2つ目と4つ目であることが少なくありません。
生地にシルクを使うと、値段はどこまで上がるのか
高価格帯のアイダーダウン布団は、側生地にシルクを使うことがあります。手触りは滑らかで、見た目にも上質です。
ただ、シルクが羽毛を包む布として最適かというと、そこは別の話になります。値段は上がる。家庭での扱いも難しくなります。
和雲はシルクを使いません。代わりにインド超長綿100%の生地を使っています。100番手の平織りで、打ち込み本数は1インチあたり350本。1平方メートルあたり85gに仕上げてあります。
羽毛の吹き出しを抑えながら、空気の通り道は残す。この生地にはDown-Breathe®という名前がついていて、通気度は6.47ccと公開されています。
生地の数値は和雲公式のアイダーモデルの商品ページに出ています。
店舗を持つと、値段のどこに乗るのか
百貨店や寝具専門店で買う場合、売り場の家賃と販売員の人件費が価格に含まれます。問屋を経由すれば、その分も乗ります。
200万円の布団を1枚売るための売り場は、それ自体が高い。羽毛の値段とは別のところで、金額が積み上がっていきます。
和雲は店舗を持ちません。自社で作って自社で売る形です。公式サイトには、生地にシルクを使わないこと、店舗を持たない製造直販であることの2点が理由として書かれています。
その2つで、シングルは100万円を切る価格に収まったとのことです。
22万円と200万円の差は、すべてが羽毛の差ではありません。
売り場を持つ会社からは、この話は言い出しにくいものです。自分たちの値段の一部を否定することになるからです。
では、アイダーダウンの布団は何を見て選べばいいのか?
見るのは3つだけです。この3つが公開されていない布団は、値段が高い理由を確かめる手立てがありません。
1つ目:アイダーダウンが何%入っているか
アイダーダウンは高価なので、他の羽毛と混ぜて使われることがあります。「アイダー混」「アイダーブレンド」という表示がそれにあたります。
混ぜること自体が悪いわけではありません。問題は、何%入っているかが書かれていない商品があることです。
まずダウン率を見ます。羽毛のうち、ダウン(綿状の羽毛)が占める割合です。次に、そのダウンがアイダーダウンなのかを見ます。この2段階で確認します。
2つ目:側生地の素材と、織りの密度
羽毛布団は、生地が重いとふくらみを押さえてしまいます。生地は軽いほうがいい。ただ軽いだけでは、羽毛が縫い目から吹き出します。
確認するのは3点です。素材(綿かポリエステルか)、番手(糸の細さ)、打ち込み本数(1インチに何本入っているか)。番手の数字が大きいほど糸は細く、打ち込み本数が多いほど目は詰まっています。
この3点をすべて書いている商品ページは、多くありません。書いていないこと自体が、ひとつの情報になります。
3つ目:どこで洗って、どこで縫ったか
羽毛は動物から採るものなので、洗い方によって臭いの残り方が変わります。それを表すのが清浄度という数値です。洗ったあとの水の透明度を測っていて、数字が大きいほど澄んでいます。
もうひとつ、どの工程を国内でやっているかも見ます。縫製だけ国内でも「日本製」と表示できる場合があります。洗浄と精製まで国内なのかは、また別の話です。
| 見る数字 | どこで確認するか | 公開が無いときの意味 |
|---|---|---|
| アイダーダウンの混率・ダウン率 | 商品ページの仕様欄/品質表示ラベル | 何がどれだけ入っているか分からない |
| 側生地の素材・番手・打ち込み本数 | 商品ページの仕様欄 | 軽さと吹き出しにくさを比べられない |
| 清浄度・製造国(工程別) | 商品ページ/ブランドの製造説明 | 「日本製」の中身が確かめられない |
混率・側生地・清浄度。この3つの数字が並んでいるかどうかが、選ぶときの分かれ目です。
その3つを満たす布団は、実際にあるのか?

3つとも数字で出している布団は、探してもほとんど出てきません。条件がそろっていたのが、和雲(わくも)のアイダーモデルでした。
価格は220,000円から。サイズと厚みの組み合わせによって幅があり、上はキングサイズの二枚合わせまで用意されています。
| 項目 | 和雲 アイダーモデル |
|---|---|
| 羽毛 | アイスランド産アイダーダック |
| ダウン率 | 99% |
| 清浄度 | 2,000mm以上 |
| 酸素計数 | 1.6mg |
| 側生地 | インド超長綿100%・100番手平織り |
| 打ち込み本数 | 350本/インチ |
| 生地の重さ | 85g/㎡ |
| 通気度 | 6.47cc |
| キルト | 立体キルト |
| 製造 | 洗浄・精製・縫製とも国内 |
| 価格 | 220,000円〜(税込) |
ダウン率99%は、羽毛100gのうち99gがダウンという意味です。残りの1gが小さな羽根(フェザー)になります。清浄度2,000mm以上は、日本の基準の4倍にあたる透明度です。
洗浄を担う工場と清浄度の考え方は、和雲公式の製造工程の開示ページに載っています。
価格と在庫は変わります。最新は公式サイトでご確認ください。
サイズは5種類、厚みは肌掛けから二枚合わせまで7種類に分かれています。どの組み合わせがいくらで、羽毛が何kg入るのかは、公式ページの一覧で確認できます。
和雲のアイダーモデルそのものの中身は、和雲アイダーモデルとは?希少なアイダーダウンの価値と価格を解説にまとめています。
サイズと厚みで、入る羽毛の量はどれだけ変わるか
| サイズ | 肌掛け | 合掛け | 本掛け | 厚掛け |
|---|---|---|---|---|
| シングル | 0.20kg | 0.60kg | 1.00kg | 1.20kg |
| セミダブル | 0.25kg | 0.70kg | 1.15kg | 1.35kg |
| ダブル | 0.30kg | 0.80kg | 1.30kg | 1.50kg |
| クイーン | 0.35kg | 0.90kg | 1.45kg | 1.65kg |
| キング | 0.40kg | 1.00kg | 1.60kg | 1.80kg |
シングルの本掛けで1.00kg。1つの巣から20gですから、50の巣分の羽毛がこの1枚に入っている計算になります。
キングの厚掛けなら1.80kg。90の巣分です。サイズが上がるほど、値段の上がり方が急になる理由がここにあります。
買ってはいけないアイダーダウンの布団は、これです

アイダーダウンという言葉が付いていても、避けたほうがよい商品があります。5つの見分け方を挙げます。
混率が書かれていない
「アイダーダウン使用」とだけ書かれている場合、1%でもその表現は成り立ちます。何%なのかを書いていない商品は、比較の対象から外して構いません。
ダウン率と清浄度の数値が無い
この2つは、まともに作っていれば必ず測っている数値です。書いていないのは、測っていないか、書きたくない数字なのかのどちらかになります。
産地が「輸入」「北欧産」としか書かれていない
アイダーダウンの主な産地はアイスランドです。産地を具体的に書けるなら書きます。ぼかされているときは、理由があると考えて動きます。
定価から大幅に値引きされている
年間2,000枚から3,000枚しか作れない素材が、半額で並ぶ状況は考えにくいものです。値引き前の「定価」がどこから来た数字なのかを、まず疑います。
側生地が「綿混」としか書かれていない
綿混という表示は、綿が10%でも成立します。羽毛にいくらかけても、包む布で軽さは変わってしまいます。番手と打ち込み本数まで書いてあるかを見ます。
安いこと自体は問題ではありません。避けたいのは、確かめる材料が無いことです。
200万円の布団と22万円の布団、10年後には何が残るのか
羽毛布団は使い捨てではありません。側生地が傷んでも、中の羽毛は洗って詰め直せます。長く使うほど、1年あたりの金額は下がっていきます。
そのうえで、価格帯ごとに何が入っているかを地図にしておきます。
| 価格帯(シングル) | 中身の目安 | 和雲の位置 |
|---|---|---|
| 3万円前後 | ダック中心。ダウン率90%未満のものもある | 該当なし |
| 5万〜10万円 | グース。ダウン率90%台前半 | スタンダード 52,800円〜(ダウン率93%・400dp) |
| 10万〜50万円 | マザーグース。ダウン率95%前後 | プレミアム 74,800円〜(ダウン率95%・440dp) |
| 22万円〜 | アイダーダウン | アイダー 220,000円〜(ダウン率99%) |
| 200万円〜 | アイダーダウン+シルク生地+店舗流通 | 該当なし |
価格帯の下2つは一般に言われている目安で、店や年によって動きます。和雲の金額は公式サイトの表示によるものです。
先に傷むのは羽毛ではなく、側生地です
10年使ったときに寿命を決めるのは、たいてい生地のほうです。羽毛は洗って戻せますが、擦り切れた生地は戻りません。
そのため、カバーを掛けて使うかどうかで残り方が変わります。カバーは消耗品として買い替える前提で選びます。
家では洗えません。手入れにいくらかかるか
アイダーダウンに限らず、羽毛布団は家庭の洗濯機で洗うものではありません。専門のクリーニングに出します。
和雲の場合、丸洗いが9,680円、羽毛を出して洗う解体洗いが37,400円です。10年で1回から2回として、年あたり数千円という計算になります。金額は変わるため、最新は公式サイトでご確認ください。
60日のあいだにできること、できないこと
和雲にはスリープトライアルという制度があります。羽毛布団は到着から60日、羽毛枕は7日のあいだ、自宅で使ったうえで返品や交換ができます。
返品手数料と返送の送料はかかりません。ただし、届けたときの送料は返金の対象外です。
条件もあります。返品・交換は一世帯につき1回まで。日数は到着日を1日目として暦のとおりに数えます。カバー類や夏用寝具は対象外で、カバーを一緒に買った場合も期間は布団の到着日から始まります。
制度の条件は和雲公式のスリープトライアルのページに全文が載っています。
返すつもりで注文する使い方には向いていません。制度は、迷いを残したまま決めなくてよくするためのものです。
3モデルの価格がどこで分かれるかは、和雲の羽毛布団は高い?3モデルの価格と違いで比べています。
よくある質問
アイダーダウンの布団は家で洗えますか?
洗えません。羽毛は水を含むとかたよりが起きます。専門のクリーニングに出します。日常は、風通しのよい日に陰干しをして、カバーを洗う形で保ちます。
何年くらい使えますか?
羽毛そのものは、洗って詰め直せば長く使えます。先に傷むのは側生地です。カバーを掛けて使い、数年に一度クリーニングに出すのが前提になります。
冬以外の季節も使えますか?
厚みを選べば使えます。和雲のアイダーモデルには肌掛け、合掛け、本掛け、厚掛けと、二枚合わせが3種類あります。羽毛の量が0.20kgから1.80kgまで分かれているため、季節に合わせて選びます。
アイダーダウンは、そんなに軽いのですか?
同じ暖かさを出すのに必要な羽毛の量が少なくて済むため、結果として布団が軽くなります。側生地の重さも効いてきます。和雲の生地は1平方メートルあたり85gで、一般的な羽毛布団の生地より約38%軽いとされています。
アイダーダウン混と、アイダーダウン100%は何が違いますか?
混合品は他の羽毛と混ぜたものです。混率が書かれていれば、値段との釣り合いを判断できます。書かれていない場合は、比べようがありません。まず混率の表示を探します。
いちばん高い羽毛布団は、どれくらいの値段になりますか?
アイダーダウンを使ったもので、200万円を超える例があります。羽毛が希少なことに加えて、側生地と売り場の費用が重なるためです。何にいくら乗っているかは、本文の価格帯の表で確かめてください。
羽毛布団はやめたほうがいい、という話も見かけます。本当ですか?
布団そのものではなく、中身の分からない商品への注意だと考えてください。混率とダウン率が書かれていれば、値段と釣り合うかを自分で判断できます。書いていない商品を候補から外すだけで、大きく外すことは減ります。
